支払不能後の既存債務に対する担保の供与ないし履行期前の弁済などは偏頗行為として、破産手続開始後に破産管財人により当該行為が否認される可能性があります(破産法162条1項2号)。
そして、上記の場合において、債務者の支払停止があった場合には支払不能にあるものと推定されます(同条3項)。
この条文構造については、破産手続開始要件と同じですね(同法15条参照)。
ここで、支払停止の意義について検討したいと思います。
同じ否認に関する規定である164条においても「支払停止」の語が用いられていますが、この条文の解釈について判例があります。
すなわち、最判昭和60年2月14日判決によれば、『破産法164条1項(旧法74条1項)の「支払の停止」とは、債務者が資力欠乏のため債務の支払をすることができないと考えてその旨を明示的又は黙示的に外部の表示する行為をいうものと解すべきところ、債務者が債務整理の方法等について債務者から相談を受けた弁護士との間で破産申し立ての方針を決めただけでは、ほかに特段の事情のない限り、いまだ内部的に支払停止の方針を決めたにとどまり、債務の支払をすることができない旨を外部に表示する行為をしたとすることはできないものというべきである。』とされています。
上記判決は、外部に対する表示行為を重視しているようですね。その理由は、債務者の支払停止は、取引の相手方にとって自己の行為が後の破産手続において否認の対象となるかならないかの行動の基準として重要な意味を持つからですね(いわゆる取引の安全のうちのひとつと考えられるのではないでしょうか。)。
通説は、支払停止とは、弁済能力の欠乏のために弁済期が到来した債務を一般的かつ継続的に弁済することができない旨を外部に表示する債務者の行為である、と定義しています。
具体的には、明示の例としては、債権者の請求に対して支払い不能となる旨を書面若しくは口頭で回答したり、店頭掲示、回状、広告などにより一般的に支払い不能の旨を表示することなどが挙げられます。
黙示の例としては、廃業、閉店、逃亡(夜逃げ)、資金不足による手形の不渡りなどが挙げられます。
弁済期を徒過したとしても、遅ればせながら弁済を続けているような場合には、いまだ支払停止とはいえないですね。
一部の債権者にもう債務を支払う余力がないから、在庫を引き上げてくれ、と債務者が意思表示した場合はどうなのでしょうか・・・。ううん、難しい問題ですが、いまだ支払停止ではないのではないか、という感じですね。
なお、否認における「支払停止」と、破産手続開始要件の「支払停止(支払不能推定の前提事実)」が同意義か、違う意義かについても学説上対立があります。
この点については、同じ意義と解する通説に従えばよいと思います。
以上、昨日の倒産手続に引き続き、破産法についての今日の考察でした。
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